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仕事がひと段落して記者席からバンクを見ると、外の夕闇と室内の明るさで窓ガラスに鏡面効果が起き、自分の顔が映っている。
暗くなったバンクとおのれの顔をぼんやりと見ている夕刻の虚無は、時間の経過を忘れさせる。タイムスリップを起こす。十五年前の記者席に在るような錯覚に陥る。
そして十五年間、なにひとつ成長していないことの自覚を競輪記者にうながすのだ。
半信半疑で電卓で計算していったらたしかに三千メートルを超えた。
自信満々の金持ちギャンブラーがラスベガスのカジノに陣取り、負けたら賭金を倍に、また負けたらその倍。いつか取り返せるはずが、資金が続かず破産した。そんな「倍倍」の怖ろしさを書いた小説を昔読んだ記憶がある。
大昔、220円配当が五回転がると幾らに膨らむのか、200円からスタート、1000円スタートの場合とこまめに計算した表を作ったことがある。愚かしいことこの上ないのだが、我が競輪が熱かった「あの時代」が懐かしくもある。
ここまで当たらぬなら、ひとつ3連単は捨ててみようかなどとも思うが、「2車単なら何とかなるとでも思い上がっているのか!」という叱責が飛んできそうなので。